バトルの体感を可視化したい

これは【その2】ドリコム Advent Calendar 2015の22日目の記事です。
21日目の記事はYAMA NARITAさんのパースについて思うこと - Nari-Nariなりです。

【その1】ドリコム Advent Calendar 2015もあわせてどうぞ。

 

今回の内容

  • 自己紹介
  • 面白いバトルってなんだ!
  • 展開が変わることは、たぶん面白い
  • 3つの要素に分けてグラフ化してみる
  • 見えてきたもの
  • 最後に

自己紹介

こんばんは、yamte です。
ドリコム3年目、スマホゲームのプランナーをやっています。

入社後しばらくはブラウザゲームでシナリオ書いたりしていましたが、
ここ1年はネイティブゲームの開発と運用を並行して行うという
楽しい生活を送っていました。

今回は、そんな生活の中でも最もしんどかった思い出深い、
新規スマホゲーム開発のプロトタイプ段階でバトルを
作った時の話をしようと思います。

ちなみに、当時作っていたゲームのジャンルは
いわゆるRPGです。

 

 

面白いバトルってなんだ!

なんなんでしょうね。

私はCall of Dutyよりメタルギアソリッドを愛するタイプのゲーマーです。
もちろん、アサルトライフルグレネードランチャーなんて使いません。
男は黙って麻酔銃CQCです。

 

どうして人はバトルしたがるんでしょう。
ダンボールに隠れてやり過ごした方が楽しいのに。

 

 

なんだかんだ大衆に受け入れられるためにバトル要素は必要なので、話を進めます。
さて、「面白いバトル」とはなんでしょうか。

 

「血沸き肉踊る、攻防がめまぐるしく入れ替わる手に汗握るバトル」でしょうか。

「シンプルながら深い戦略性があり、拡張性の高いバトル」でしょうか。

「お気に入りのキャラクター達が時に可愛く、時に格好良く暴れ回るバトル」でしょうか。

 

「面白いバトル」は上記のように様々に言語化され
それを元に仕様が書かれて作られるわけですが、
実際にできたものを遊んでみると…

 

はて、これは面白いのだろうか?(否、面白くない)

 

という壁にぶつかってしまうことが多々あります。(ありました)
あるいは

 

はて、これは面白いのだろうか?(まぁ、確かに面白いっちゃ面白いし作りたかったコアメカニズムは実現できてるんだけど、なんか足りない気がするしすぐ飽きるだろコレ)

 

という壁かもしれません。(という壁でした)

 

私はプロトタイプ段階でバトルを作った時に
この壁にぶつかってしまったのですが、
以前同じような状況に陥っていたプロジェクトに参画させて頂いた際に
当時のメインプランナーの方からある改善手法を学ばせていただいたことがありました。

 

それを発展させた「面白いバトル」を作るために何が必要かを
探すための手法が、今回の話になります。

 

変わることは、たぶん面白い

これが、今回の手法の大前提になります。

 

変わりゃいいというもんでもないですが、
ゲーム中で何かが変わればそれは何らかの形でプレイヤーに伝えられ、
刺激となって脳をちくちくします。

逆に言えば、何も変わらないと感じるゲームは面白くないわけです。

 

ということは、

面白いバトルは何が変わっていて
面白くないバトルは何が変わってないのか

が分かれば、「面白いバトル」の謎を紐解けるのではないでしょうか。

 

3つの要素に分けて、グラフ化してみる

バトルというのは味方パーティが全滅したら負けで、
敵パーティを全滅させれば勝ちです。

 

つまり、プレイヤーは「敵の脅威」「味方の危機」を常に感じながら
バトルという時間を過ごしているはずです。

 

さらに、プレイヤーは自分が今どのくらい有利な状況にあるか、
つまり「優位度」を感じているはずです。

 

バトルの色んな要素をそれぞれの軸に当てはめると…

  • 敵の脅威:敵の数、敵の残りHP、敵の攻撃力、敵の防御力など
  • 味方の危機:味方の数、味方の残りHP、味方の残り回復アイテムなど
  • 優位度:味方のバフ、コンボ数、スキルゲージ、敵のブレイクゲージなど

大体こんなところでしょうか。

これをグラフに表わすとこうなります。 

f:id:yamte:20151222015124j:plain

優位度はきっとス◯ルトやバ◯キルトをちょこちょこかけて
ステータスが上昇しているのでしょう。

バトル中に起こる変化をとても単純に表すとこうなります。

 

これよりも面白いと私が感じたバトルは、こんな図になりました。

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敵を倒したと思ったらなんと突然変身して強くなったのです。
一気に脅威がハネ上がりました。

一方、味方は回復アイテムでHPを回復していくも、
アイテムは有限なので危機感はどんどん蓄積していきます。

しかし、バトル開始時からちくちくと溜めていた必殺技ゲージがMAXになり
必殺技を放つことで辛くも勝利を収めることができました。

 

なるほど、こんな変化が描かれると面白いバトルになるようです。
ここで登場した要素は

  • 敵が変身して、脅威度が上昇する
  • 回復で危機を回避できるが回復リソースが限られており徐々に追いつめられる
  • 必殺技ゲージがだんだん溜まっていき、放つことで一気に敵の脅威を下げられる

といったところでしょうか。
ならば同じような変化を作れる機能を
自分のゲームに合わせて実装すればバトルは面白くなるかもしれません。

 

ちなみに、優位度はゲームによりますがスマホゲームでは
徐々にたまっていって、ここだ!というタイミングで
優位度と引き換えに脅威度や危険度を下げるものが多いです。

パズドラで言えばスキルのターン数ドロップ状況がこれに該当します。

 

ところで、当時私が作っていたバトルのグラフはこんな感じです。

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敵の脅威が上がったり下がったりしているのはWAVEで敵が襲ってくるためです。

いわゆる「ブレイク」の概念があり、
敵をブレイクさせるとしばらく防御力が下がって攻撃ができない…
といったシステムだったので、ブレイク後は優位度が上がっています。

 

これを見ると、優位度の変化がほとんどありません。
なるほど、面白く感じられないわけですね。

 

では、こんな形を目指したらどうでしょうか。

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バトル中に何度も優位度の変化があり、
プレイ次第で優位度曲線の傾きを変えられるバトルです。

なんだかよく分かりませんが味方の危機
不思議な変化をしています。(詳細は忘れました)

 

これをバトルの仕組みに落とし込んだら、面白くなりそうです。

 

見えてきたもの

色んなゲームのバトルをグラフに落とし込んで見るうちに、
いくつか見えてきたものがありました。

1.スマホRPGのほとんどは脅威度と危険度だけでは面白くならない

コンシューマーゲームRPGはシステムがより複雑なこともありますが、
何よりバトルと探索がセットで一つのゲームになっています。

 

ということは、味方の危機の上昇(回復アイテムやMPの減少)
バトルをまたいで継続するので、バトル自体が同じでも別の体験が得られます。

 

ところが、
スマホゲームは手軽に遊べるように1プレイが細かく切られているので、
危機がすぐリセットされてしまいます。

 

したがって、優位度の仕組みがないと面白さが担保できないようです。
スマホRPGコンボ要素が多いのは恐らくそのためでしょう。

 

2.マルチプレイのゲームほど、優位度がよく変わる

マルチプレイで売れているゲームほど優位度がよく変化していました。

 

シングルプレイのバトルでは敵の一挙一動を注視して行動しており
敵の脅威に注意が向いているのに対して

 

マルチプレイのバトルでは他プレイヤーの状況や、
他人から見た自分を意識して遊ぶからかもしれません。

 

マルチプレイ要素のあるゲームを作る際には
優位度がよく変わるように作ってあげるとよさそうです。

 

最後に

この方法で体感をグラフ化すると、
漠然と探るよりは手っ取り早く着実に足りない要素が洗い出せます。

 

…が、あくまでこれはリソースをカテゴライズしてグラフ化しただけです。

 

この手法そのままに足りない要素を埋めていくと
どんどん仕様が膨らんでいき手がつけられなくなるかもしれません。

 

バトルの改善に行き詰まった時の
分析と問題洗い出しの手法の一つとして使っていただけたら幸いです。

 

明日

【その2】ドリコム Adevent Calendar 2015 23日目はhayato240さんです。